「飼養衛生管理基準」(案)についての要望書

「飼養衛生管理基準」(案)についての要望書

              

アニマルウェルフェアフードコミュニティジャパン

                           

代表 矢崎栄司

以下の基準案の削除・見直しを要望します。

  • 「牛、水牛、鹿、めん羊、山羊」及び「豚、いのしし」の同基準(案)
    「大臣指定地域に指定された場合の放牧場、パドック等における舎外飼養を中止」(Ⅲ-26、Ⅲ-28)の削除
  • 放牧制限の準備(I-9)の削除
  • 愛玩動物の飼養禁止(I -11)の見直し(「使役動物の除外」を追記)

私たちは「家畜(動物)は感受性のある生命存在でありストレスによって病原菌に対する免疫力を失い、感染して病気になる。それ故飼育者は家畜をストレスから解放し、行動要求が満たされた健康的で福祉レベルの高い生活をおくれるように飼育する責任があり、流通業、食品加工業、レストラン等の飲食業に従事する人たち、研究者・専門家、最終消費者である多様な人々がアニマルウェルフェアを重視するライフスタイルを目指して生産活動と生活活動を結びつけるフードチェーン形成が必要」と考えており、会員個々が主体的にその実現に向けて活動しています。

そのなかで放牧飼育はアニマルウェルフェアの「5つの自由」を実現できる重要な一つの方法と考えます。放牧することで動物が太陽のもとに伸び伸びと運動し、行動要求が満たされストレスから解放されて健全に育ち、感染症にかからない、かかりにくい高い免疫力を持つことを、アニマルウェルフェア畜産を実践してきた放牧農場生産者は経験知として実感しています。また、食品加工・流通業者や飲食業者、研究者・専門家、購入消費する消費者は多くの人たちがアニマルウェルフェアに適う放牧飼育から生み出される畜産物を求めていることを知っており日々の活動から多くの知見を得ています。

以下、当会会員の率直な意見を記載いたします。

<生産者>

  • 家畜にとって望ましいのは屋外飼養を通して家畜伝染病に対する免疫力を獲得すること。動物とウイルスは共存すべき存在と考え、免疫力を含めた耐病性を高める適切な放牧飼育は許容されるべき。
  • ウイルス性疾病は空間的・距離的な自然防御により野生鳥獣からの感染は非常に少ないと考えられている。
  • 豚熱発生地域ではワクチン接種以降豚熱は発生しておらず、屋外での飼養中止による家畜への負荷を増やす伝染病感染対策の有効性に疑問がある。
  • 放牧制限には生産者目線・農業の視点が欠けている。
  • 放牧に社会の関心が集まっており、畜産の未来の可能性として若者の養豚業への参入を促進している。

<専門家・研究者>

  • 農林水産省「養豚農業の振興に関する基本方針のポイント」では銘柄の一つの特徴として放牧を位置付け、養豚振興の一手法として確立している。
  • 家畜のウイルス感染は舎飼養豚場で多発しており、舎飼養豚へのアニマルウェルフェア飼養管理改善を政策的に優先すべき。
  • ワクチン接種の現状では舎飼養豚場と放牧養豚場の感染リスク可能性での区別はできない。
  • 放牧養豚についての科学的知見(疫学的な研究成果)が少ない段階では経験知にもとづいた対策しかない。
  • 基準案中の放牧制限と密飼いの防止は矛盾する。
  • 遊休農地や未整備の山裾の森林への放牧で豊富な野草を飼料とすることができ、家畜を環境管理動物としても活用できる。温暖多湿な日本は草の成長が早く1ha当たり年間25トンの生草収穫が可能。

<加工・流通・飲食業>

  • 消費者が望む安全安心な畜産物の供給に取り組む生産者の活動を妨げ、消費者の選ぶ権利を阻害、離農者も増やす。
  • 世界の潮流であるアニマルウェルフェアの取組が衰退し、安価な外国産畜産物に対抗できる放牧・アニマルウェルフェア畜産物の可能性を妨げる。
  • 農林水産省は事前に全国各地で十分な意見陳述の場を確保する責任がある。

<消費者>

  • 放牧制限により家畜のストレスが増加して耐病性が低下した際に薬剤に依存した疾病予防に陥ると、消費者に家畜飼育は過剰な殺菌や消毒が必要と印象づける恐れもあり本末転倒。
  • 消費者には家畜が動物らしく生きる放牧飼育を選択する権利がある。
  • 放牧と感染拡大との因果関係については放牧飼育農場を含めた議論を経て慎重に検討されるべき。
  • 動物福祉と倫理的消費への関心が広がり放牧に大きな価値を感じている人も多く、放牧制限によって消費者の選択肢が海外に向く。
  • 「愛玩動物の飼養禁止」に使役動物は含めず、共通感染症の観点から畜種により飼養できない動物を提示すべき。

私たちはアニマルウェルフェアに適う畜産方式の一つとして放牧飼育の研究を進めていきたいと考えています。農林水産省においても日本型畜産の未来像を描く試みとして是非ともご協力いただければと存じます。